私たちは人生の3分の1を眠って過ごしています。
24時間のうち8時間。90歳まで生きるとすれば、その30年分を睡眠に費やしていることになります。
そして、その眠っている間の睡眠の質が、私たちが起きているときのパフォーマンスを大きく左右します。
近年、「睡眠を科学する」「睡眠科学」といった言葉を耳にする機会が増えてきました。それだけ睡眠の重要性が認識されるようになったということでしょう。
それならば、住まいをつくる建築実務者である私たちも、睡眠についてもっと真剣に考え、環境づくりに取り組むべきではないでしょうか。
睡眠環境の中でも、“明るさ”は睡眠の質にもっとも大きな影響を与える要素の一つです。寝室の照明の色や配置、朝の自然光の取り入れ方が、良質な睡眠を得るためのカギ。
さらに、寝室だけでなくLDKの明るさも、良質な睡眠を得るうえでのポイントとなります。
夜はホテルのような仄暗さがある方が眠りを誘いやすいのですが、前提として日中はなるべく明るい環境で過ごすこと、日光を浴びること。
その理由は、体内時計とホルモンの働きにあります。
日中、大きな窓から日の光がたっぷり注ぎ込む明るいリビングで過ごすことで、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌されます。一方、夜間は照明を落としたリビングやダイニングで過ごすことで、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が促されます。
そして、朝になったら再び自然光を浴びることで、体内時計をリセットする。このサイクルを繰り返すことで、良質な睡眠を得られるようになります。
照明や日照以外にも、快適な睡眠環境を実現する方法はあります。
たとえば、無垢の床や塗り壁などの自然素材を内装に使うこと。とくに今の季節、湿気を多分に含んだ熱気が睡眠を妨げますから、自然素材の調湿作用により寝室の湿度をちょうどよい具合に保つことで、眠りに落ちやすくなります。
もちろん、良質な枕やマットレス、季節ごとの寝具も睡眠の質を高めるのに役立ちますが、快眠グッズはあくまでも睡眠環境を補完するもの。根本的な睡眠の質を決めるのは、寝室の設計や住空間全体の環境です。